木もれ陽ベンチ

神奈川県川崎市在住の70代後半男性。栃木県那須町の高齢者住宅「ゆいま~る那須」を契約。90代後半の母の介護があり完全移住ではありません。現在は別荘気分で使用しています。

【第73回】近所で見つけたカラオケ店

 先月の中頃でした。朝刊を広げたら、近隣の美味い店を紹介するチラシがあり、「焼き鳥屋」が載っていました。別に珍しいことでもないので、そのまま捨てようとしました。その時、その店の開店時間に目が止まりました。午前11時半から営業と書いてありました。

 繁華街の店ならともかく、住宅街の中にある「焼き鳥屋」で、昼間も営業しているのは珍しいことでした。興味を持って読んでみると、わが家から自転車で5分位の所にあり、しかも信玄鶏を使っているとありました。

 

 私がサラリーマンの現役時代(もう20年以上も前です)、仕事が終わるとよく焼き鳥屋に行きました。「焼き鳥」と言っても鶏肉でなく、豚の臓物いわゆるホルモン焼きでした。適当に食べて飲むと、後はカラオケ店へというのがお決まりコースでした。

 退職してからはそうした機会はなくなり、月に1度カラオケスナックに行く位の、実に地味な生活を送っている私です。

 

 昼間も営業しているとなると、「たまには焼き鳥でも‥‥」という気になりました。土曜日の昼間、早速行ってみました。

 店に入るとタブレットを渡され、注文はそこに打ち込んで頼むシステムでした。いちいち打ち込んで注文するのも面倒なので、12本おまかせセットにしました。焼きあがるまでビールを飲んでいると、店側が適当に見繕ったものが出てくるのです。

 久しぶりの焼き鳥は美味でした。ただ、終盤の頃にまとまって出されたのには閉口しました。その点、サラリーマン時代に通った焼き鳥屋は見事でした。そこは10本セットで、最初の5本は待たせないで出てきます。そしてその5本が食べ終わる頃、絶妙なタイミングで残り5本が出てくるのでした。30名ほどの客に対して、皆そのように振舞っていました。いろんな種類の注文があるだろうに、よくその順番が分かるものだと、オヤジさんの脳みそに敬服したものでした。

 

 その日は昼間のアルコールと焼き鳥で、いい気分で家路に向かいました。するとその焼き鳥屋の近くにカラオケ店があるのに気づきました。しかも焼き鳥屋と同じ屋号が付いているのです。店の案内板を見ると、「開店は19時から24時、1時間1,250円で歌い放題、飲み放題」と書いてありました。

 これは格安です。近くにスナックもありますが、ビール500ml瓶が1,000円、カラオケ1曲200円でした。それと比べると段違いです。ただ女性スタッフはいないということでした。飲んでカラオケが目的な訳です。

 

 カラオケが好きな私です。次週の土曜日に行ってきました。テーブル席が4つあり、音質も画質も良いカラオケ設備が揃っていました。20時に入店して2時間ばかり唄いました。その間、他のお客は2名だけでした。飲んで唄って2,500円。一体これで商売になるのかと、心配になって店員に聞きました。

 このカラオケ店は、焼き鳥屋の宣伝のためであり、売り上げは期待していないということでした。店員も歌が好きで、客が唄う合間に、時折店員も唄うという気楽な店でした。いいお店があったものです。やはり外に出てみるものですね。家の中にいたら、こうしたお店があることも分りません。

 

 ただひとつ気になったのは、一緒に居た他客2名の選曲が、私には皆目分らぬ歌なのでした。私は演歌が好きなのです。昭和歌謡のメロディーと歌詞を楽しみたいのです。しかるに、何か早口でまくしたてるような歌声、歌詞の内容よりもリズムを楽しむといったような歌が流れてくるのです。

 私が気になるというのは、店の客層と言いますか、その店がどんな歌を好む客で占められているかということなのです。カラオケ店では、自然と似たような歌が唄われるようです。若者向きか、家族向き、定年を迎えた人向きかといった様に、ある傾向が出来ます。私が月に1度行くカラオケスナックは、歌謡曲と演歌がよく流れます。派手さはなく落着いた雰囲気の店です。

 

 果たして今度のカラオケ店はどうなのだろうか。1回行っただけでは分りません。次の週また行きました。やはり私の知らない歌が流れました。仲間同士笑いながら、喋りながら、私には意味の分らない歌詞やリズムが飛び交います。

 勿論これは私が古い人間で、今流行の歌についていけないだけのことです。今の歌には今の良さがあるに違いありません。ただそうした歌が多い中で、昭和歌謡は馴染みません。全体の流れというものがあり、途中で演歌が入っても何か浮いた感じになってしまいます。客層ならぬ曲層(そんな言葉はないでしょうが)が違うようです。

 

 折角見つけた良いお店なのに残念です。週末の土曜日など、夕食を済ませた後ふらっと立ち寄り口ずさむ。家からも近く気軽に通える、気晴らしには恰好の店なのにでした‥‥。

 いやいやまだ2回しか行っていません。諦めるのは早すぎます。もしかしたら演歌好きな客も来るかも知れません。何度か足を運んでもう少し様子を見ようと思っています。折角見つけた良いお店なのです。あきらめられません。