木もれ陽ベンチ

神奈川県川崎市在住の70代後半男性。栃木県那須町の高齢者住宅「ゆいま~る那須」を契約。90代後半の母の介護があり完全移住ではありません。現在は別荘気分で使用しています。

【第80回】尻目づかいで

 春です。暖かいです。ついこの間までの寒さが嘘のような陽気です。この暖かさが実感できるのは、台所仕事をしている時です。特に野菜や果物を洗ったりしている時に。味噌汁の実である野菜を準備している時は、どうせ煮込むので、湯沸かし器のお湯で洗います。なので問題ありません。つらいのは果物や糠漬けの野菜を洗う時です。この時には湯沸かし器のお湯では洗えません。水で洗います。

 タワシで皮の表面をゴシゴシ洗い、そして手でなぞり水切りをします。包丁で皮を剥いたり刻んだりします。この一連の作業に真冬の水の冷たさが堪えるのです。ぬるま湯で処理するやり方もあるでしょう。しかし、私はやはり水でゴシゴシ洗いたいのです。ぬるま湯だと何か果物や野菜の新鮮さがなくなってしまう気がするのです。冷たい水を浴びせることで、果物や野菜がシャッキとするのではないかと期待しながら。その水の冷たさが緩くなり台所仕事が楽になると、あぁようやく春が来たなと実感出来るのです。

 

 既にこのブログで述べましたが、昨年の10月にわが家の外壁塗装をしました。築45年の古家ですが、それなりに何とか見られるようになりました。さしずめ人間でいえば、厚化粧で外見を整えたというところでしょうか。そして外壁塗装をしてみて、意外なことに気づきました。外壁塗装だから、外壁がきれいになったのは勿論のことです。意外だったのは、外壁とは別に木部である桟や窓の格子、鉄部であるトタンやベランダ回りの塗装も大事な修繕であるということでした。

 外壁は面積も広いこともあって、汚れやヒビなどはよく目に付きました。反面、桟や窓の格子、鉄部であるトタン部などは色も黒っぽいこともあって、あまり気にしませんでした。塗装するに当たって、改めて見てみると予想外に傷み古びていることが分りました。桟や窓の格子などはひび割れしており、庇のトタン板は塗料が剥げていました。それらを塗装処理することで、塗料の樹脂がひび割れを埋め、水をはじく弾力と艶がよみがえりました。

 

 そして何よりも効果があったのは、2階のベランダの塗装でした。ここのベランダは塗装が剥げて錆付いていたのです。うっかり触ろうものなら手が汚れる始末でした。なので出来るだけ傍に寄り付かないようにしていました。ところが塗装処理をしたことで、見違えるようになりました。今では毛布や敷布などをベランダで干せるようになりました。陽の光を浴びた毛布は気持ちがいいです。また、ベランダに身体を寄せて、日光浴もするようになりました。ベランダ周りがきれいだと日々の過ごし方も変わるのでした。

 当初外壁工事の見積もりを取った時に、外壁部分と木部や鉄部塗装部分の金額がほぼ同額なのに疑問を持ちました。素人考えでは、どうしたって外壁部分の方が面積が多いからです。しかし作業の面倒さ、細かさを知ることで納得しました。あの桟や窓の格子、雨戸のトタン板やベランダ回りの塗装作業は、大変手間がかかり気を遣うものなのでした。

 

 ついひと月前のことですが、母親(97歳)がテーブルから手を滑らせて、床に倒れてしまいました。その時身体を庇ったためでしようか、右手の甲に怪我をしました。かなり広い部分を擦りむいて皮がめくれたのです。そんなことで下半身の処理(母親は紙パンツとパッドを着用しています)がうまく出来なくなり、1日に1回介護ヘルパーさんが来てくれることになりました。お尻回りをきれいにしてくれるのです。

 そこで母親の尻部分に床ずれがあるのが見つかりました。1円玉くらいの大きさです。さて、薬を付けることになったのですが、介護ヘルパーさんは薬を付けることが出来ません。医療行為は駄目という訳です。医療行為といっても、大き目の絆創膏に床ずれの薬を塗って尻に貼るだけなのですが、法の規定でヘルパーさんはやってはいけないのだそうです。

 そんな訳で、1日に1回介護ヘルパーさんがお尻をきれいにしてくれたところで、私が母親の尻に絆創膏を貼り付ける役目をしています。悪いことに、床ずれの場所が肛門のすぐ近くなのです。あまり見たくありません。出来るだけ見ないようにして処理しています。そう、場所が場所だけに、文字通り尻目づかいでやっています。

 それでも少しずつ床ずれの肉が盛り上がってきたようです。1日も早く治癒して、母親の尻を見ない日が来るのを待ち望んでいる昨今であります。