木もれ陽ベンチ

神奈川県川崎市在住の70代後半男性。栃木県那須町の高齢者住宅「ゆいま~る那須」を契約。90代後半の母の介護があり完全移住ではありません。現在は別荘気分で使用しています。

【第43回】コロナ禍での思わぬこと 2つ

 22日、新型コロナウイルスによる、首都圏1都3県の緊急事態宣言が解除されました。やれやれです。とは言っても、東京では週間平均300人を越す新感染者が出ています。お酒を提供する飲食店は夜9時までの営業制限です。早くワクチン接種が行き渡り、皆が安心して暮らせる日が来るのを願うばかりです。当分はマスク着用と手洗い、人との距離を置いた行動が続きます。
 マスクと言えば、メガネを掛けている私にとっては、マスクを着用した時に息でメガネが曇るのが困りごとでした(特に外気の冷たい冬季が)。視界がはっきりしないのは、何とも煩わしく不快なものです。ところが、思わぬことで解決できたのです。実に簡単なことからでした。


 その日は、ついうっかりしてマスクをしないまま、家を出てしまったのです。途中で気づきました。私はそんな時のために、予備としてバッグにマスクを忍ばせてあるのでした。「やはり用意しておいて良よかった‥‥」と、もう何ヶ月もバッグにしまったままのそれを着用しました。

 するとどうでしよう、いつもと違ってメガネが曇らないのです。不思議に思ったら、そのマスクはあの有名なアベノマスクなのでした。各家に配布すると言いながら、いつまでも届かず、いざ着用してみると小さすぎて効果が期待できないと、多くの人から不評を買ったマスクです。私も普段は着用する気にならず、しかし捨てるのもどうかと思い、どうでもいい感じでバッグに放り込んでおいたのでした。

 それが、メガネを掛ける者には思わぬ利点をもたらしたのです。使い捨ての不織布製と違って、アベノマスクはガーゼ布製なのです。通気性があり息の熱が籠もりません。従ってメガネが曇らないのです。思わぬ快適さに驚きました。文字通り、目の前がぱ~っと明るくなりました。今では私はアベノマスクの愛好者であります。思わぬ発見でした。


 思わぬことと言えば、こんなこともありました。94歳の母親の話です。足が弱く、歩行もままならない母ですが、それ以外はいたって健全で、特に持病といったものもなく暮らしています。ただ2ケ月に1回は通院して、便通をよくする薬や脚のむくみを抑える薬を処方してもらって服用しています。

 実はこの通院が、足の弱い94歳の母にとってはひと苦労なのです。5分くらいの診察に、行って帰るのに2時間半を要します。通院といっても特に治療するでもなく、ただ薬を処方してもらうだけなのです。通院する日が来る度に溜息です。

 そんな時にこのコロナ騒ぎです。特に症状に変化のない場合には、電話での診察が出来ると耳にしました。母はさっそくそれに飛びつきました。電話で医師に聞かれたことに返事をし、変化がないと判断されると薬を処方してもらえました。ものの3分もかかりません。電話診察は2回連続しては出来ません。3回目には病院に行き医師と面会し、改めてまた電話診察が受けられるのです。もう何回も実行しました。母が言うには、「コロナの思わぬおかげ」なのでした。

 

 実際、電話だけで済ませるのは大変有り難いことでした。通院往復2時間半という時間だけでなく、金銭的にも大変助かるのです。足の弱い母は、独りでは通院出来ません。タクシーを利用して、介護保険のヘルパーさんに付き添ってもらいます。1回通院すると、タクシー代が2,600円。付き添い代が6,000円。合計8,600円かかるのです。それが不用となるのですから大変な違いです。

 ちなみにこの付き添い代6,000円ですが、その内介護保険対象分は600円で、あとの5,400円は保険対象外なのです。タクシーの中、病院での待ち時間、診察時間は介護保険対象外なのですから、一体介護保険は何なのかと驚いてしまいます。そのくせ毎月の介護保険料は5,300円の負担です。そんな訳で、電話で済む診察は本当に有り難いものです。いやいやそれもこれも、母親が健全であればこそ、こうしたやり方で済むのです。先ずはそのことに感謝せねばなりません。