木もれ陽ベンチ

神奈川県川崎市在住の70代後半男性。栃木県那須町の高齢者住宅「ゆいま~る那須」を契約。90代後半の母の介護があり完全移住ではありません。現在は別荘気分で使用しています。

【第45回】母のワクチン接種

 新型コロナウイルス感染拡大が収まりません。今や世間の関心はワクチン接種で持ちきりです。94歳になる母の元にも、先月の末に接種券が来ました。早速申し込みをしょうとしましたが、電話は全然つながりません。電話をかけた途端にNTTから、「只今つながらない状態です」と、一方的な案内があるだけです。パソコンでWEBの予約サイトに送信しましたが、こちらも満杯でアクセス出来ません。また初めてのことなので、予約コーナーに辿りつくまで手間がかかり、自分の操作に問題があるのかなどと、いろいろ悩みました。結局午前中は駄目で、夕方になってやっと予約が取れました。実際に接種できるのは1カ月後の今月末です。

 

 予約が取れたことを母に話すと、「ワクチンはしたくない」という返事が帰ってきました。面倒くさいし、もう齢なので今さらバタバタしたくない。また、昔何かの予防注射をした時に、たいそう身体がつらかったこともある。そんなことで接種はしたくないと言うのでした。私は、「やっと予約が取れたし、老齢だからこそワクチンが大事だ」と話しました。テレビを見ていても、皆がやっきになって予約していること。それでも中々取れない中、せっかく確保できたのに勿体無いと言いました。母はようやく納得して、接種を受ける気持ちになりました。

 

 話は変わりますが、今年の初めにパソコンを買い替えましたが、現在とても快適に使用しています。前に使っていたものが、速度が遅くなったために買い替えたのですが、今度のと比較すると、鈍行と新幹線ほどの違いがあります。

 さてこの古いパソコンをどうしょう。ただ捨てるのは勿体無いと思いました。速度が遅くなった原因のひとつは、長い間に色々ソフトやデータが溜まったためかも知れません。そこで初期化をしてみました。本当にWin10機能だけのシンプルなものになりました。少しだけ速度が戻った感じです。

 たまたまテレビの「リモート生活術」という番組で、ズームの使用例を紹介しているのを見ました。そこで私も、新旧2台のパソコンを使って、1階に居る母と2階の私をリモートでつなげてみることにしました。私が2階の自分の部屋に居ながら、1階の母の姿を見ることが出来るのです。互いに会話も出来ます。94歳の母は普段元気ですが、急に気分が悪くなることが時々あるのです。そんな時にはこのオンラインはとても便利だと思いました。部屋を別にしていてもそれとなく様子が伺えるのです。

 母とズームで初めて対面した時、「気持ち悪い!」と言われてしまいました。確かに毎日顔を合わせている者同士が、パソコン画面で対面するのは、なんとも奇妙な感じです。昔、初めてテープレコーダで自分の声を聞いた時の違和感に似たものがあります。しかしいざとなったら、きっと役に立つものと思っています。

 

 いよいよ今週末に、母のワクチン接種の日が近づいてきました。ところが母は、「やはり接種したくない」と言い出しました。そんなに嫌だと思っているのを無理に接種するのもどうかなと、色々迷うところです。副反応も心配です。私には、何がなんでも接種しなさいとは言えないのです。

 実は、以前母は夕食後に「気持ち悪い」と言って、ベッドに横になってしまうことが多々あったのです。そして翌朝になるとケロッと治まるのでした。そうしたことを何度か繰り返す内に、ふと思い当たることがありました。夕食後に気持ちが悪くなる時は、食が進まない母に対して、少しでも箸を付けるようにと、私が無理に食べさせようとした時なのです。母は私に「ちょっとでも箸を付けるように」と言われると、渋々ながら食べていました。そして暫くすると「気分が悪い」と言って、横になってしまったのです。

 それからは、食欲のない時の母に対しては、無理に食べることは言わないようにしました。すると夕食後の「気持ち悪い」がなくなったのです。母は、息子である私に何か言われると、本心では嫌だと思っても、「仕方ない」と思って従っているようでした。しかし身体の方は正直なので、「気持ち悪い」となってくるのでした。

 人は知らない内に自分の気持ちを押し付けたり、反対に、「嫌だな」と思っても、お前がそう言うならと、不本意ながら従ってしまうところがあるようです。母は、母なりに私に気を遣っているのです。そう気づいてからは、私は母に対して余り強くものを言わないようにと心がけているのです。

 何回か念を押してもやはり、「ワクチンは打ちたくない」と言います。そんな訳で、母の接種はキャンセルすることにしました。大事なワクチンです。次の人に回さねばいけません。