木もれ陽ベンチ

神奈川県川崎市在住の70代後半男性。栃木県那須町の高齢者住宅「ゆいま~る那須」を契約。90代後半の母の介護があり完全移住ではありません。現在は別荘気分で使用しています。

【第72回】「那須まちづくり広場」を見学して

 今月の14日から19日の間、ゆいま~る那須に滞在しました。出発する2日ほど前から台風7号が接近してきました。直撃すると新幹線もストップする大型台風です。運よく関東・東北地方は逸れてくれました。

 出発当日、晴れていると思ったら急に大雨になり、また太陽が顔を出すのを繰り返す、めまぐるしい車窓風景でした。那須塩原駅に着いた頃は綿菓子のような雲がポッカリと浮かび、その上に青空がのぞいていました。まさに牧歌的という表現がぴったりでした。新白河駅に着くとまた土砂降りの雨という、遠く離れていても台風7号の影響の大きさがよく伝わりました。

 

 早いものでゆいま~る那須に入居契約をして10年が経ちました。しかし時々しか滞在しないため、家具類などはまだ揃っていません。少しずつ準備をしているところです。今回は衣装戸棚と食器棚を購入しました。各々幅60cmほどの小さな家具です。滞在中に配達するよう業者に依頼しておきました。

 ちょっと驚いたことがあります。搬入するに当たって各々「玄関先納入」となっていましたが、本当に玄関先までしか運んでくれないのでした。狭い居室なので、あとちょっと運んでくれれば其処が設置場所なのに、決して玄関先以上は中に入れてくれません。運んでうっかり壁や床にキズを付けてしまうことを危惧している様でした。会社の規則で厳しく言い渡しがされているのでしょう。

 幅60cmの小さなものといっても、やはり衣装戸棚です。それなりに高さも重さもあります。玄関からすぐ近くが設置場所でしたので、なんとか自力で運ぶことが出来ましたが、頑なまでの納品業者の規則厳守でした。余計な責任は負ってはならぬという企業方針なのでしょう。

 食器棚は「お客様組み立て」となっており、組立て所要時間45分と記してありました。説明書通りに作業してみましたが、開梱と後片付けやゴミ処理を含むと90分位は掛かりました。こうしたものは余裕を持って取り掛かる必要がありますね。こうして少しずつ家具などが揃い、居室らしくなっていくようです。

 

 私は居室の中で是非こうしてみたいと思う事があります。それは物を出来るだけ収納するという事です。ともかく物を出したままにしておかない。本はもちろんパソコンや筆記類、こまごまとした身の回りの物を、使い終わったら決めた収納場に仕舞うということです。そうすることで居室がスッキリとし、後片付けや掃除が簡単に済むからです。

 最近の私は物を探すことが多いのです。必要な時に見つからずあちらこちらを探す時間が増えました。部屋が散らかっているとそんなことがよくあります。そうした無駄をなくしたいと思っているのです。

 

 今回の滞在中に是非行きたい所がありました。「那須まちづくり広場」です。ゆいま~る那須から車で15分位の近さにあります。廃校になった小学校校舎と校庭を利用して、生涯活躍のまち、新しい学びとコミュニティの拠点として再生するという目的で開設されたのです。以前見学した時はまだ準備段階という感じでしたが、その後の完成した姿を見たかったのです。

 広い校庭だった場所には49戸の自立型サ高住が建ち、空部屋は1戸だけという満席状態とのこと。元校舎は改修され、多世代住宅、ホール、カフェ、マルシェ、ゲストハウス、貸事務所、放課後デイサービス、就労継続支援B型が入る「多世代・多文化コミュニティゾーン」になっていました。

 屋内プールだった建物は要介護型のサ高住(26室)に改修され、24時間常駐する介護スタッフが入居者を見守っています。体育館は那須町の防災の拠点となっているとのこと。

 

 また最期まで自然体で暮らせる場所として、コミュニティ型シェアハウス「みとりえ那須」がありました。言うまでもなく、「ゆいま~る」の基本理念は完成期医療福祉です。死は終わりでなく、人生の完成と捉えます。「みとりえ那須」はまさにその具体的な実現の一例ではないでしょうか。

 生活の基本である食事、洗面、入浴、排泄などに独自な工夫をこらし、できるだけ自分の力で、自分らしく過ごせるような住まいになっていました。独自な工夫というのは、例えば手すりなども「掴む・握る」という従来の考え方でなく、身体の弱い人を支える、寄り添うという造りになっています。滑りにくいように溝を付けるなど細かい配慮が伺えました。「みとりえ那須」は東日本大震災で使用したログハウスを移築した、温かみの感じられる洒落た建物でした。

 

 昔はお盆が過ぎると少しは涼しくなったものです。しかしここ数年というもの、8月末になっても依然と暑さが続いています。いつまでも暑いです。

 そんな中、私の母はこの18日に97歳の誕生日を迎えました。今では日中の多くをベッドに横たわっています。それでもトイレには自力で行き、食事も小食ではありますが自分で食べることが出来ています。夏の暑さには弱い母ですが、こうして今年の夏も無事に過ぎようとしています。