このブログの第61回で、私の母親の両脚に水ぶくれや内出血が出来てしまい、包帯を巻いていることを述べました。早いものであれから3カ月が経ちました。毎晩シャワーを浴びた後に薬を付けた甲斐があり、内出血の方は大分腫れが引いてきました。水ぶくれの方は皮が破れ、肉がえぐれた状態だったのが、少しずつ肉が盛り上がってきたところです。やれやれこの分だと来春には包帯が取れるかも知れないと安堵していました。
ところが今月の初め、今度は台所の床に倒れてしまい、左腕の皮がむける怪我をしてしまったのです。こちらも薬を塗って包帯を巻きました。キズが浅かったこともあり、今カサブタになってきたところです。
問題は母親が床に倒れたという状況です。原因を探り対策を練らねばなりません。96歳の母は足が弱いこともあり、かなり前から手すりや小さな歩行器を使って、食卓やトイレ位までは自分で行っていました。時には体調が悪く、自分だけで行くのを不安がる時もあります。そんな時は傍に付いて、万一倒れそうになった時にはすぐ支えるようにすると、安心感も手伝ってか、結局は人手を借りずに行くことが出来るのでした。
床に倒れたその日も、別に具合が悪かったわけでもなく、日中は手すりや小さな歩行器を使って、食卓やトイレに行っていたのです。
実は、その倒れたという時間帯が夜中の1時頃なのです。これはその日が何か「特別な日」というのでなく、母はいつもその時間帯まで起きていて、ようやくベッドに着くのを常としている人なのでした。「年寄りは早く寝るものだ、せめて息子である私たちが起きている内にはベッドに着くように」と何度言っても耳を貸さない母なのでした。 夜の12時頃ともなると、さすがに息子の私も就寝します。しかし母親は洗面所にいてなにやらゴソゴソしているのです。そして最終のトイレに行き、ベッドに向かおうというのが1時頃なのです。床に倒れたのは、そんな時間帯なのでした。
2階にいる私は物音に気づき、母親が何か叫んでいるので1階に下りていきました。初めはただ床に倒れただけだと思ったのですが(以前にも何度かありましたので)、倒れるのを必死に支えようとして、何かに腕を擦ってしまったのです。
しかしこんなことがあっても、母は1時まで起きているのを止めようとはしません。もう長い間染み付いた生活のリズムなのでしょう。本当に損な性分としか言いようがありません。母は日中の殆どをベッドに横たわっているので、睡眠不足ということはありません。むしろ夜中になると益々目が覚めてくるのかも知れません。
さて倒れた原因と対策ですが、原因の方はよく分かりません。誰だって何かのはずみで足をからませたり、躓いてしまうことがあります。たまたまということもあるでしょう。では次に対策です。原因が分らないのに対策というのも変ですが、少しでも善い策があればと思いました。
一番いいのは母親が早く寝ることです。息子の私たちが起きて傍に居れば、それとなく注意したり手助けが出来ます。しかしこれは先ほど言ったような訳で諦めました。
その腕のキズを診てもらうために、いつもの在宅医療の先生に来てもらった時のことです。先生はもっといい歩行器がある筈だと、ケアマネジャーに連絡してくれました。ケアマネジャーは早速歩行器の見本を取り寄せてくれました。今まで使っているチャチなものでなく、かなり大きなしっかりしたものでした。
しかし母はひと目見て怖気ついてしまいました。今までのは背の低い母が、前かがみになって手すりや歩行器を操りながら、一歩一歩前に進むというものでした。今度のは歩行器だけを使い、全身をそれに預けて進むというものです。大きいので前かがみではなく、ちょっと背筋を伸ばして行くという感じでした。もう何十年も今の歩行器と手すりを使っての母です。ガラッと違うタイプのやり方はとても無理だと、私も思いました。
母はケアマネジャーや看護士さんの前で、今までのやり方を実際にやってみせました。その動き方を見て、皆さんも納得しました。ただケアマネジャーさんは、もうひとつ新たに手すりを付けた方がよいと指摘してくれました。成る程そう言われてみると、確かに付けた方がよい箇所がありました。こうして違う目で、プロの目で見ると分ることがあるのですね。早速ホームセンターに行き、適当なのを見つけて付けました。母も以前よりしっかりと掴まれると言っています。
これで一件落着かと思い勝ちですが、もうひとつ問題がありました。母はそうして1時頃に自分のベッドに潜り込むのですが、掛け布団を上手に掛けることが出来ません。タオルケットの上に電気毛布を乗せ、さらに毛布や掛け布団を被せるのですが、それを身体に合わせることが容易ではないのです。どうしてもすき間や捲れてしまう部分があるのです。
なにしろ冬の寒さです。少しでもすき間があると暖まりません。特に首周りのところはしっかりと布団を被せたいです。仕方ないので、母がベッドに潜り込んだ1時頃、私は折角暖まった布団から出て、1階の母のところに行き、隙間のないように布団を整えるのです。
考えてみると去年もその前の年も、夜中の1時頃自分のベッドに潜り込む母の、冬の寒さはあったわけです。しかし私は掛け布団の掛け具合に一向気づきませんでした。それでも母は風邪を引くこともなくやり過ごしていました。条件は今年も同じ筈です。
しかし1度気づいてしまったからには、私はそうせずにはいられないのです。これも私の損な性分と言えるでしょう。ようやく体温で暖まり馴染んだ布団から出るのは辛いです。しかしそうしないと私は安眠できないのです。
誠に性分というものは厄介なものであります。