木もれ陽ベンチ

神奈川県川崎市在住の70代後半男性。栃木県那須町の高齢者住宅「ゆいま~る那須」を契約。90代後半の母の介護があり完全移住ではありません。現在は別荘気分で使用しています。

【第32回】続けたいスナック通い

■ユーチューブの歌唱をなぞって

 私は昼食を済ませると、特に用事がない時は30分間ほどパソコンに向かいます。食休みを兼ねて、ユーチューブで歌謡曲を聞くのです。唯聞くだけではありません。歌手の歌唱に合わせ、自分も一緒に歌います。なので歌詞の字幕が流れる画像がいいです。歌は好きなのですが、根っからの音痴な私です。

 しかし酒に酔うと、音痴なことも忘れてマイクを握ってしまいます。何とかならないものかと思案し、ユーチューブで練習することを知り、数年前から始めています。

 習字で例えれば、お手本の上に薄紙を乗せ、その通りになぞるというやり方です。何度も何度も繰り返しなぞります。やがて字幕を見なくても、歌詞を覚えてきます。その頃になると、ようやくたどたどしいながらも、歌らしきものになってくるようです。唄のへたな私ですが、そうやって歌を覚えていくのは楽しいものです。

 その内に自分の声に合っている歌と、合わない歌がなんとなく分ってきます。私は明るい歌よりも、暗い歌が合っているようです。やはり性格というものは自然と出るようです。従って演歌が多くなってきます。

 

 こんなことがありました。堀内孝雄の「恋唄綴り」という歌がありますね。古い歌ですが、以前からいい歌だなと思っていました。覚えたいと思って堀内孝雄の歌唱をなぞってみたのです。しかし全然追いついていけないのです。途中で喉が苦しくなって声が出なくなるのです。残念です。いい歌なのに自分には歌えないのだと諦めていました。

 ある日香西かおりが、その「恋唄綴り」を唄っているのを聞きました。同じ歌でも、歌手によって唄い方が違うのですね。私はもしかしたら、この人の唄い方ならなぞれるかも知れないと思いました。早速、香西かおりの「恋唄綴り」をなぞってみました。すると声が出たのです。よく分らないのですが、同じ歌でも色んな声の出し方があるようです。何回も何回も繰り返してなぞってみました。

 ようやく歌詞も暗記出来た頃、改めて堀内孝雄の「恋唄綴り」をなぞってみました。あんなに出来なかったのに、今度は追いついていくことが出来たのです。勿論たどたどしい唄い方ですが、こうした覚え方もあるのだと知って嬉しくなりました。

 

■スナックの気さくなママさん

 私がこんな風に歌を覚えたいと思うのは、ひと月に1度カラオケスナックに行くのを楽しみにしているからです。ようやく覚えた歌謡曲を酔いに紛れて唄うのです。スナックでは歌の好きな者が集まって、世間話をしながら唄います。色んな人が来ます。どんな歌を唄うかで、なんとなくその人となりが感じられます。その歌が自分も好きだったりすると、それを切っ掛けに会話が生まれます。スナックでの面白さとは、そうした所にもあります。

 私が通っているスナックは、わが家から電車を利用して小1時間ほどの横浜日吉駅の近くにあります。わが家の近所にも店はありますが、やはり馴染みのお店はいいものです。現役サラリーマンの時代から知っている所です。退職してから暫くは遠ざかっていましたが、6年前から再び通い出しました。

 実は、私は14年前の58歳の時に直腸がんの手術をしたのです。後遺症で尿閉となり自力で尿を出すことが出来ず、7年間は外出もままならない状態でした。その後少しずつ自力で排尿することが出来るようになりました。とても嬉しかったです。そして少しでも外の空気に触れようとスナック通いを思いついたのです。月に1度くらいの割合で、ふらっと立ち寄り、一杯飲みながら、歌を聞いたり唄ったりする、そんな時間が持てたらいいなと思ったのです。

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              夕闇に包まれ、開店前のスナック

 6年前に再訪した時、スナックのママさんは私を歓迎してくれました。私が将来のことを考えて、サービス付高齢者住宅の ゆいま~る那須へ入居契約した事などを話すと、大変興味深く聞いてくれました。ママさんもちょっと大きな病気をしたりして、将来のことを色々考えるようになったと言います。

 ママさんは人の話を聞くのが上手です。読書が好きで好奇心が旺盛です。ゆいま~る那須を見学したいと言って、ゲストルームに1泊したのは去年のことでした。そうした気さくなところが、42年間スナック経営が続いている秘訣かも知れません。

                                  

■コロナに負けず

 月に1度のスナック通い。サラリーマン時代と同じ電車で日吉まで行きます。駅も風景も昔と変わりません。しかし気分はずいぶん違います。忙しかったあの頃に比べ、なんとゆったりした日吉行きでしょう。電車に揺られているとサラリーマン時代のあれこれが浮かんできます。嫌なことやつらいこともありました。でもそうしたものも含めて、今の自分があるのです。

 時おり昔のことを振り返るのは、決して後ろ向きなことではありません。その時には分らなかったことが、どういう意味を持っていたかを、今になって気づくことだってあるのです。そうした切っ掛けが出来るためにも、たまの外出は大事です。

 新型コロナウイルス感染が心配です。だからと言って家に閉じこもってばかりもいられません。やるべき感染防止対策をしっかりしながら、これからもスナック通いを続けたいと思っています。

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     気さくなママさん