木もれ陽ベンチ

神奈川県川崎市在住の70代後半男性。栃木県那須町の高齢者住宅「ゆいま~る那須」を契約。90代後半の母の介護があり完全移住ではありません。現在は別荘気分で使用しています。

【第67回】 わが家の厚化粧  

 昨27日の東京新聞朝刊に、「八重洲ブックセンター本店が今月末で営業を終える」という記事が、一面に大きく載っていました。このブックセンターには思い出があります。あれは10年ほど前のことです。三菱一号館美術館が古風なレンガ造りの建物だと聞いて、ぜひ見てみたいと思い見学に行ったのです。

 時間に余裕があったのでブックセンターに寄ってみました。すると「加島祥造墨彩画展」が開催されていました。私は伊那谷老子と呼ばれている加島氏のファンでした。実物の墨彩画を見るのは初めてでした。これは三菱一号館美術館どころではない。とてもいいものを見せてもらったと、喜びを噛みしめながら墨彩画を見ていました。

 そしてもっと驚いたことには、その会場に加島祥造ご本人が居られたのです。私は思わず握手を求めました。氏は苦笑しながら手を差しのべて下さいました。一生忘れられない思い出です。

 

閑話休題

 春です。桜満開の季節がやってきました。強制的にマスクをしなくてもよいことになり、とても開放的な気分です。今年は暖かくなったらぜひ実行しようと思っていることがありました。わが家の外壁塗装です。なにしろ築45年の建物です。古いです。よくここ迄もっているなというのが正直な気持ちです。

 建物で一番気になるのは耐震状態です。昭和56年5月31日以前に着工した木造2階建物などは耐震性が低いと言われています。当時は耐震に対する基準が、今より緩かったのです。昭和53年に建てたわが家はまさに該当します。私の住んでいる川崎市では、希望者に無料で耐震診断士を派遣し、耐震診断を実施しました。

 そこで13年前に耐震診断をしてもらいました。震度6強程度の地震に耐えられるかどうかを診るのです。結果は「倒壊する可能性がある」でした。市では相談員を選定し、わが家に来てくれました。どのような耐震化の方法があるかの説明です。

 本格的に耐震化をするとなると、かなり大掛かりな工事と高額な費用になります。比較的手頃な価格による方法もありますが、今ひとつ効果の程がはっきりしませんでした。相談員もこれと言った提案も示さず、何か中途半端な感じでそれっきりになってしまい、今日に至っています。

 

 屋根はコロニアルだったのを14年前にガルバリウムにしました。これも耐震性を考え、軽くて丈夫なものをと思って鋼板にしたのです。屋根は強い日光や風雨が直接当たるので傷みやすく、特に注意を要する部分と言われています。

 外壁は10年単位が塗り替えのサイクルだと聞いていました。なので、建ててから10年ごとに2回は塗装をしました。2回塗装したからでしょうか、それ以後は目立ったヒビも汚れもなく、いつの間にか今日まできてしまいました。つまり25年間なにも手入れをしませんでした。

 しかし改めて見てみると、さすがに25年間放置していただけあります。細かなヒビもあり汚いです。建物は近隣との釣合いというものがあります。そこで今年は外壁塗装をしようと思った次第です。

 

 そう思うと、途端にチラシや広告が目につくものです。いろいろな宣伝文句があり、どんな業者に頼んでいいか迷います。例えばこんなものがあります。

1.PR用に1年間、お宅の工事完成写真を使わせて頂くことを条件に、外壁塗装工事を通常価格の半額にて提供

2.外壁と屋根の塗装を同時契約することで特別価格

3.オープン○周年記念祭による大特価

 価格だけを比較すれば簡単です。安いのを選べばいいのです。しかしどんな材料を使って、どういう塗装工程になるのかといった詳しいことは、チラシや広告では分りません。そこで外壁塗装のことをネットで調べてみました。

それによると

1.塗料はシリコン樹脂が耐用年数の上で優れている。しかしこれにも3種類あって、「耐候型1種」が長持ちする。

2.塗装工事費用の大半は、職人の人件費や足場代なので、塗料は少々高くても良いものを選ぶこと。

3.塗装工事は3回塗り(下塗り、中塗り、上塗り)が基本。その時に中塗りまではきちんとするが、上塗りを適当に済ませてしまう手抜き工事をする業者がいる。原因は中塗りと上塗りに同色の塗料を使うことが多いためである。誠意ある業者は中塗りの色と上塗りの色を変えて、塗り残しのない工事をする。

などが注意点として書かれていました。素人には中々気づかない点です。

 

 築45年のわが家。果たしてあとどの位もつものか。外壁塗装の耐用年数がいくら長くても、家そのものが古いのです。その辺の兼ね合いを考えて、どんな工事をしてもらうかを決めたいと思います。あまり難しく考えないで、例えば老いた人がちょっと厚化粧をして、それなりの身なりを整えてみる。そんな感じでいいのではないかと思っています。

 さて、冒頭の加島祥造氏に握手してもらった話ですが、正確に何年に行ったかを確かめたくて日記を見てみました。2010年でした。13年前です。

 驚いたことに、場所が八重洲ブックセンター本店ではなく、丸の内丸善本店でした。全く記憶ほどいい加減なものはありません。と言うより、こうした思い違いや錯覚が、最近の自分に多いのです。我ながら情けなくなります。

 今後こうしたことは増えることはあっても、減ることはないでしょう。大事なことは記憶に頼らず、必ず再確認してみること。肝に銘じた次第です。