木もれ陽ベンチ

神奈川県川崎市在住の70代後半男性。栃木県那須町の高齢者住宅「ゆいま~る那須」を契約。90代後半の母の介護があり完全移住ではありません。現在は別荘気分で使用しています。

【第23回】ゆいま~る那須の図書室を想う

緊急事態宣言発令で公共図書館も閉鎖

 例年ですと、この5月の連休にはゆいま~る那須で過ごすのが、私の定番でした。93歳の母は、要介護2で足が弱いこともあり、常に誰かが傍にいないと不安がります。なので平日は私が家におります。会社勤めの弟が連休になるゴールデンウイーク、夏休み、年末年始の時期は、弟が母を見ます。その間に私がゆいま~る那須へ行くという訳です。

 那須居住者の方と交流できる、年に3回の数少ない機会です。それが今回の新型コロナウイルスによる緊急事態宣言で行けなくなりました。普段のほとんどを家にいて、変化のない毎日を送っている私にとって、偶のゆいま~る那須行きも駄目というのは、本当に残念なことです。

 

 そうした平凡な毎日の中で、私を慰め楽しませてくれるのは、図書館から借りて読む本です。川崎市内には13カ所の図書館があり、その中から自分の読みたい本を選んで、ネットで予約して取り寄せることが出来るのです。

 ところが、緊急事態宣言が発令した途端、このネットで取り寄せることは中止となってしまいました。宣言が発令される前も、図書室内への立ち入りや閲覧は出来ませんでした。しかしネットで予約して取り寄せることは出来たのです。

 「できるだけ外出しないで家にいなさい」という外出自粛要請の中では、読書こそ求められるものです。図書館こそ活動してほしい場です。ネットで予約して取りに行くだけのことでしたら、そんなに人との接触はありません。例えばスーパーやコンビニでのレジ店員さんとのやり取りの方が、はるかに時間を費やし、人と近距離になります。

 

色んな意見を聞くことの大切さ

 それなのに図書館閉鎖というのは、あまりにも画一的で考えがなさ過ぎるのではないか。そうした疑問を抱く人は多いようで、新聞の投稿欄にも同じ様な意見が出ていました。中には、「図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする」という「図書館の自由に関する宣言」に反するではないか、もっと工夫すべきだという厳しい発言もありました。

 成程、何か意見を述べる時は、こうした公法に則った主張は説得力があるものだと感心しました。ところがこの間、次のような新聞投稿がありました。

 新型コロナウイルス問題がまだ深刻化はしていないが、感染拡大が危ぶまれていた時のこと。図書館内で、閲覧する本や書架に向かってマスクをせず咳をしている利用者を、その投稿者は見たのです。そしてこう述べています。

 「利用者が全てマナーを守るとは限らない。家では、殆どの人がマスクをしないだろう。本に飛沫が付着したまま返却される可能性もある。表面がなめらかなものに付着したウイルスは感染力が持続すると言われている。本を介して感染を広げないため、図書館の職員を感染の危険にさらさないために、今は我慢の時である」と。

 成程、そう言われてみれば確かにその通りです。多くの人の意見を聞く大切さとは、正にこのことです。いろいろな角度からものを見て考える必要があると思いました。

 5月4日には、緊急事態宣言が延長された中で、公園や図書館などの利用は全国的に認められました。しかし不安が解消された訳ではありません。私は図書館に拘らないことにしました。そして家にある本を見直してみました。すると、途中で読むのを止めてしまったものや、買ったまま忘れてしまったものなどがありました。そうしたものにもう一度目を通す、いい機会です。こういう時でないと中々手にしません。おかげで溜まった本の整理が出来るというものです。

 

自分を振り返る、贅沢で豊かな時間

 実は、この本を整理するということについて、私はとても楽しみにしている事があるのです。私がゆいま~る那須に完全移住した際、一番荷物になるのは本です。自宅には本棚が3台あります。それらの本を33㎡の狭い那須居室に並べ飾ることは出来ません。かと言って捨てることも出来ません。いざ手放そうとすると未練が湧いてしまうのです。本には、その内容と共に色んな思い出があるのです。

 私が楽しみにしている事とは、ゆいま~る那須には広さ43㎡程の図書室があることです。そしてそこには居住者が提供した様々な内容の本が並んでいます。と言うことは、もう再読はしないが捨てるのは惜しいと思う本を、この図書室がもらってくれるのです。

 ゆいま~る那須に移住すれば、今よりは時間や気持ちにゆとりが出来ます。溜まった本にひと通り目を通し、今まで読んできた本を見直すことが出来ます。そしてもう読むことはないと思うのを図書室に提供するのです。

 その「今一度、ひと通り本に目を通す」ということが、私には贅沢で豊かな時間に思えるのです。自分がどんなことに関心を持ち、影響を受けてきたかを再確認してみたいのです。もう読まない本を捨てるのでなく、図書室に置いてもらえるなら、誰かが読んでくれるかも知れません。捨てるという罪悪感がなく、本の整理が出来るのは大変有難いことです。

 

気分転換の場所としても

 図書室の管理・運営は居住者の方が自主的に行っています。本をテーマ毎に分類したり、作家名のあいうえお順に並べたりします。閲覧・貸出が厳しいかと言うと、そんなことはありません。本を借りてもノートに記帳することもしません。もしずっと手元に置きたければもらっても良いのです。本当に好きな人が持っている方が、本も幸せだろうという皆さんの申し合わせです。私も移住したら管理・運営のお手伝いをしたいと思っています。

 実はその図書室は、私の居室から歩いて20歩という近さにあるのです。ちょっと次の部屋に行く感覚で行けるのです。心地よいソファーと快適なエアコン、テレビもあり、まるで書斎がある感じです。読書だけでなく、気分を変えるための空間としても利用できそうで、これもまたもう一つの楽しみです。

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ゆいま~る那須の図書室